後遺障害の程度(等級)

後遺障害のある案件では,最大の争点になります。

1 自賠責請求

まずは,自賠責請求で何級に認定されるか が最初のポイントです。
後遺症が残っている診療科の診断書,添付文書,画像などをそろえて,自賠責保険に提出して請求し認定を受けます。
後遺障害が複数ある場合や,(評価が分かれる可能性がある中で)重要な判断をしてもらわなければならない場合,弁護士が「意見」を添えて提出し,適正に認定されるように努めます。

例1 高次脳機能障害

提出する資料(後遺障害診断書,家族の日常生活状況報告その他)の内容から,被害者の後遺障害の内容について,自賠責認定の基準に照らし,どの程度(等級)相当の内容があるかを整理して記します。
大事なことは,まず,本人の日常生活の状況をできるだけ具体的に詳しく,本人や家族,周りの人から聞き出し,「見える」ようにすることです。
労災保険による分類(意思疎通能力,問題解決能力,持続力・持久力,社会適合性の4つの能力)に応じた分析をして,後遺障害に該当することを説明することもあります。

例2 腰椎圧迫骨折案件

レントゲン画像上の椎体の長さを計測し,書き込んで図示することによって,等級認定の基準を満たしていることを記します。

2 自賠責請求に対する異議申立

自賠責請求の等級認定(非該当の場合もある)に対して不服があるとき,異議申立ができます。
これは何度でもできます。
ただし,特別な場合を除いて,全く同じ根拠資料をもとに異議申立をしても結果が変わらない場合がほとんどです。
ですので,最初の自賠責請求時に提出しなかった資料を補充して,異議申立をすることになります。
一旦結論の出たものに対する異議申立ですから「ほとんど変更されない」傾向があると思われがちですが,補充資料が有力なものであれば変更されることがあります。
異議申立により認定等級が変わった例について私は何度も経験しています。

例1 医師の意見書

元の認定には理由が書いてあります。
「○○の理由で後遺障害とは認められない」等と書かれているとき,その部分について医学的に間違いであればその旨を,また,もう少し説明すればわかってもらえるという場合には詳しい説明を付け加えます。
このポイントの部分について,主治医などの医師に協力を求めて書いてもらい,医師の「意見書」を添付して提出することになります。

例2 カルテなど

病院のカルテを提出し,治療の経過全部をみてもらえれば,訴えているものが事故の後遺障害にあたることがわかるはず,ということがあります。
では,なぜ,「異議申立」ではなく最初の自賠責請求のときからカルテを出さないか?といえば,カルテにはその患者のあらゆる情報が書いてありますから,内容によっては「事故の後遺症が無い(軽い)」と誤解されかねない記載を含んでいる場合もあります。
従って,最初からカルテ全てを出すのが良いとは限らず,また,自賠責請求の仕組みとしても「カルテを全部出しなさい」とはなっていないのです。
そこで,自賠責請求に対して回答(認定)があったけれども,不十分な物で,被害者の後遺障害があることを積極的に認める方向で「カルテ」の記載が役に立つ,と判断される場合に,異議申立時の根拠資料(追加資料)として「カルテ」を提出することがあるのです。

例3 追加の検査

自賠責認定で,カルテや通常の検査内容(レントゲン,MRI)だけではなかなか認められない場合,より専門的な検査を受けて検査データを提出することもあります。
専門的な検査になればなるほど,検査の実施可能な病院が限られてくる(大学病院や専門病院など)ので,検査を受けること自体が大変ですが,必要な場合にはその方法をとることを考えます。

3 裁判

自賠責で後遺障害の等級が出ますが,それが最終的な答えとは限りません。
裁判所は,自賠責の認定が間違っていると思えば,裁判所の判断で例えば「この人には○級の後遺障害がある」と認定しても構いません。
ただし,裁判所が自賠責の認定結果を重視することには違いありません。
「自賠責で認められなかったけれども後遺症がある」というためには,自賠責の認定が正しくないことを根拠をもって主張しなければなりません。
その根拠は,やはり医師の診断書・意見書や検査データなどが中心になります。